『一の拙の字に無限の意味あり』~菜根譚より
酒造りをする中で、確かに経験や知識、技術の向上によっての進歩には手前味噌ながらあるにしても、何か人の心を打つ何かが足りないのでは、と特にここ近年省みて悩みました。
真っ当な技術を突き詰めていくのは当然としても、予定調和を覆すエネルギーをお酒に宿らせたい、このような想いを抱いていた時にこの一文に出会いました。
調和、バランスを求めつつも敢えて「破れ」の部分を造る、それは意図的、技巧的なものではなく、何かより奥底から突き動かされる情念によるもの、呑んで頂ける皆様への想い、日本酒という日本人の価値観を讃えることのできるかけがえのないものへの重いの強さだと思います。
酵母は敢えてオールドファッションな601号酵母で、先人の想い、米のポテンシャルを引き出して自分では予想のつかないものを産み出したい、そのような意図を込めました。
これからも、この答えようのない、終わりなき酒の道の先はどこにあるのかを求めて精進していく所存です。
蔵元 高井幹人